旧ライフハック心理学

心理ハック

心脳図鑑 スキナーボックスの脳科学

ネズミがレバーを倒すと、チーズが出てくる。そのことに気がつくと、箱の中のネズミは、繰り返し繰り返しレバーを倒すようになる。

B・F・スキナーのこの実験は有名で、以来、行動心理学は「オペラント条件付け」という、新しい領域に入りました。それまでの行動心理学では、いわゆる「パブロフの犬」がよだれを流すような、「古典的条件付け」によって基本的な心的活動を説明していたのです。

報酬とは?

とはいえ、古典的でもオペラントでも、報酬によって後天的な行動や反応は強化され、学習の成果となって現れる、というわけですが、報酬とは何でしょう? 多くの場合報酬とは「エサ」ですが、どうして「エサ」は報酬たり得るのでしょうか? 「エサ」は脳にどういう影響を及ぼすのでしょう。

1950年代の初頭に、カリフォルニア工科大学のジェイムズ・オルズとペーター・ミルナーは、脳内を直接刺激することによって得られる「報酬」を利用すれば、スキナーボックスのようなオペラント行動を強化できるのではないかと考えました。この仮説は見事に実験され、俗に「快楽中枢」と呼ばれる「報酬系」が発見できたわけです。

実際、このエントリの最上部にあるように、この実験で用いられたのはいわゆる「スキナーボックス」です。ただし、レバーを倒してもエサが出るのではなく、ネズミは脳内を直接刺激できるようになっています。このことを最初「偶然見つける」ネズミは、すぐに繰り返し脳内を刺激するようになります。この行動は自己電気刺激と呼ばれています。

この実験によって少なくともネズミに関して、報酬と強化を認知神経学的に了解することができるようになったわけです。

▼参考
ウィキペディア「腹側被蓋野」
hhttp://bit.ly/14tdcN

Wikipedia “Pleasure center”
http://en.wikipedia.org/wiki/Pleasure_center

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心理テストのメリットとデメリットについて述べよ-臨床心理ノート

今週から、こんなことをはじめてみました。

「臨床心理を勉強したいが、何から手をつけていいか分からない」とか、「カウンセリングに興味があるが、あまりにも大変そうだ」という、漠然としたお悩みをいただく機会が増えているので、このブログをのぞいている方には身近なネタから拾い集めてみて、「結局どんなことについて答えられるようになることが、とりあえず必要か」という点をサポートしていければと思っています。

当面は、「模擬テストの例題」を中心にアップしていきますが、この問題の背景に、知っておくべき知識が控えています。その周辺の事情までだんだんわかってくるにつれ、「何から手をつければいいかわからない」という状態を脱することができるはずです。

【問題】

心理テストのメリットとデメリットについて述べよ

【方針】

この手のテストではまず、「心理テスト」の定義を忘れないで書くことが、必要です。これが「日常用語」なんかではあり得ないことを、臨床の世界に浸っていると、つい忘れがちです。

次に、言うまでもなく「メリット」と「デメリット」について、それぞれ想定されている内容を網羅し、両者のバランスが取れるように、記述しておくことが必要でしょう。

▼「心理テスト」とは

・人間の精神状態や精神構造を客観的に把握するために開発されたテスト
そんなことがあんなテストでわかるものか、などといちいち突っ込まないで答えましょう。

・質問紙法、作業検査、投影法などがある
質問紙法は当然誰もが考えつきます。作業をさせるというのは、質問するよりも「ウソがつきにくく」見える点でいいかもしれませんが、当然手間がかかります。投影法は、面白いけど面白すぎます。

・治療開始時にアセスメントとして用いられることがよくある
治療開始時に、「じゃあとりあえずテストしてみましょう」とお医者さんが言いたくなるのは、当然です。

・治療中や治療後に、治療効果をチェックするために用いることもある
臨床の場において、「効果」は絶対でないとしても、クライエント(患者)やその家族が効果を求めるのは自然のことです。

▼「心理テスト」のメリット

・観察ではわかりにくい「内面理解」の助けになる
「ウソをつけるではないか」と言われるかもしれませんが、高度なテストになってくると、その「ウソのつきかた」からも一定の心理的傾向を計ったりします。

・人と話すのが苦手なクライエントでも質問用紙にはすらすらと答えられることがある
こういうことはよくあります。思春期の頃には私自身がそうでした。

・データベースを作成できる
同じ質問を用意し、数値化するので、これを蓄積してデータベース化したくなるのがふつうです。

・診断、治療法の選択、治療効果について、比較的客観的に計測できる
「心理テスト」のところでも述べたとおり、治療前、治療中、治療後にテストをするのは、この目的のためです。

▼「心理テスト」のデメリット

・治療者がテストを過信するとステレオタイプにつながる
「心理テスト」よりははるかに厳密な態度をとる「実験」であっても、「予断を排除する」ことの困難はよく指摘されています。色々なテストを組み合わせる「テスト・バッテリー」という手法もありますが、いずれにせよ「純粋な客観性」を望める技術ではありません。

・テスト結果次第ではクライエントが絶望したりすることもある
しかし、クライエントは治療者ほどの知識を持っていないのが前提のため、治療者がではなく、クライエントが結果を絶対視するということがしばしば起こります。この点はよく注意喚起されています。

・ウソをつくことに全力をあげている頭のいいクライエントのテスト結果は信頼できない
フィクションですが『羊たちの沈黙』のレクター博士のような人に対して、心理テストなどしても、役に立たないということです。

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あなたは「意志の強い人」ですか?

「意志の力」なんてアテになりません。

ということが、たいていの自己啓発系の書籍やビジネス本に書いてあります。意志力のカタマリのような著者ですら、そう書くのが面白いところです。

ほとんどの読者はそれを読んで、「この人ですら意志の力をアテにできないのだから、自分は絶対にそれをアテにしたらダメだな」と思ってしまうかもしれません。

しかし、あなたの「意志力」は本当に弱いのでしょうか?
ちょっとテストしてみましょう。

「意志力」チェックをやってみる

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今週の活動レポート

今週はシルバーウィークだったため、いささかアップデートが変則的です。来週からは、いよいよ脱稿した『iPhone情報整理術』について言及していきたいと思います。

誠 Biz.ID

あなたの不安、見積もります
今週はシルバーウィークでしたので、変則的で、本日掲載予定です。テーマは「カバンの中身を減らす方法」についてなのですが、「不安だとモノを持ち歩く」というのは「不安だとモノをためてしまう」という心理にも通じます。

いざというときのために、という心理が不安とつながり決断を鈍らせるわけですが、この問題と現代の知的生産者は戦う必要があります。

ライフハック・トーク

9 記憶を脳の外に出せば効率が上がる
今回は、第9回となります。テーマのトリガーは、以下の問題提起です。

堀 僕らは頭脳というのは記憶して、記憶したことを考えるためにあると思いがちです。でもいったん外に記録した方が、脳の処理の力も向上するのでしょうか?  GTDファンの私がこういうことをきくとおかしいかもしれませんが、だとすれば、これってどうしてなんでしょうね。自明なようでいて、自明ではないですよね。

自明なようで、自明ではない。感覚的には自明なのですが、理屈を考えると、そうではない。いくつか説明する方法はありますが、いずれも認知心理学的な話に通じていきます。ライフハック的にも心理学的にも、開発しがいのあるテーマだと思います。

シゴタノ!

心理ハック
娘の誕生につき、お休みをいただきました。毎日娘を「観察」していますが、考えさせられるところが多々あります。いまのところ、私の中では、深層心理学よりも行動科学の方に軍配を上げたくなる行動が目につきます。

あすなろ

笑えば(少しは)幸せになれる
この効果は、「顔面フィードバック仮説(トムキンス仮説)」と呼ばれます。

「書き出すと頭がスッキリする」のはなぜ?
実はここで、「ライフハック・トーク第9回」への、もうひとつの仮説をあげておきました。「書き出すと頭がスッキリする」理由の一つは「メタ記憶がの緊張が解放されるから」なのです。

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「とっさの判断」の心理学

本書が登場するまで、心理学の世界でもあまり取り上げられることのなかったテーマがあります。「直感」や「第6感」のことではありません。それらは、それまでもそれなりに取り上げられていました。

そうではなくて、「瞬間的認知」という本書の冒頭で登場する概念です。「最初の2秒の何となく」とはその「瞬間的認知」のことであり、これは「あとからなら説明できる」という、いわゆる「無意識の気づき」のことではなくて、「何となくだが意識の上で気づいていた」ことを意味しています。

ですから「瞬間的認知」はあとからでも反芻でき、説明もできます。ただ一つ大きな問題として残るのが、これを利用できない自信のなさや後悔です。そして本書で言いたいことは、「とっさの判断はけっこうアテになるモノだよ」ということなのです。

輪切り

本書でいきなり登場する「輪切り」という独特な用語は、この「瞬間的認知」のことを指しています。マルコム・グラッドウェルの著書には、妙に「心理学的な」ところがあるのですが、本書は中でももっともその傾向が強いと、私は感じました。

「輪切り」は、一連の状況を瞬間的に切り出し、その状況が意味するところをほぼ読み取ってしまうという、人間の驚くべき認知的判断力を指した言葉です。

こういうことをそれまでに研究した学者がまったくいなかったわけではなく、たとえば認知心理学者ゲリー・クラインの「危機的状況での意志決定プロセス」などでは、似たような概念が説明されています。

第一印象

「瞬間的認知」についてここまで述べてきたことから、どうしても連想されるのが「第一印象」です。第一印象と瞬間的認知とは、どう違うのか?

両者には重なる部分も当然あるようです。本書を読む限り、私には両者をはっきり区分できるようには思えませんでした。

ただ、「輪切り」と「第一印象」には大きな違いもあります。そもそも「輪切り」は「認知」ですが、「第一印象」はその名の通り「印象」です。「認知」は多分に知覚的でリアルタイムの現実の断片ですが、「印象」とは「印象形成」という言葉もあるとおり、もっと全体的なイメージに近いものです。「雷」における「稲光」を「瞬間的認知」とすれば、「雷光から雷鳴まで」の全体を「雷の印象」とでも言えるでしょうか。

また、「瞬間的認知」は「記憶」であるよりも多分にその場その場の直接的な知覚ですが、「印象」は「印象が残る」という言葉からもわかるとおり、「記憶的」な要素も多々含みます。本書でグラッドウェルは「第一印象の誤り」を「瞬間的認知」が修正できる、ということを示唆しています。

情報過多

さらに「瞬間的認知」の恩恵にあずかるには、「認知力」ともいうべき能力を高める必要があります。だからこそグラッドウェルは「情報過多」の問題点を指摘するのです。

情報に頼るということは、直感力をあまり使わない、ということになるでしょう。自分の知覚力よりは、数値的なパターンなどによる再現性の方に期待する。しかし本書では、有り余るほどの情報を得ても、そのためにかえって判断できなくなることの危険が、よく説かれています。

本書は至ってわかりやすい本です。グラッドウェルだけのことはあり、エピソードも興味深く、データも魅力的です。他の本でもそうですが、心理学の用い方がじつにユニークで、見ようによってはユニークすぎるとも思えるでしょう。

しかし本書の主張はかなり一貫していて、次の引用の通りです。大事なのはこれを、「時間をかけて熟考してみても、瞬時のひらめき程度の判断力にしかならない」と、勝手に書き換えないことです。

綿密で時間のかかる理性的な分析と同じくらいに、瞬時のひらめきには大きな意味がある。

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