心理ハック
「とっさの判断」の心理学

- 2009年09月24日 (木)
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第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい (翻訳) 沢田 博 光文社 2006-02-23 |
本書が登場するまで、心理学の世界でもあまり取り上げられることのなかったテーマがあります。「直感」や「第6感」のことではありません。それらは、それまでもそれなりに取り上げられていました。
そうではなくて、「瞬間的認知」という本書の冒頭で登場する概念です。「最初の2秒の何となく」とはその「瞬間的認知」のことであり、これは「あとからなら説明できる」という、いわゆる「無意識の気づき」のことではなくて、「何となくだが意識の上で気づいていた」ことを意味しています。
ですから「瞬間的認知」はあとからでも反芻でき、説明もできます。ただ一つ大きな問題として残るのが、これを利用できない自信のなさや後悔です。そして本書で言いたいことは、「とっさの判断はけっこうアテになるモノだよ」ということなのです。
輪切り
本書でいきなり登場する「輪切り」という独特な用語は、この「瞬間的認知」のことを指しています。マルコム・グラッドウェルの著書には、妙に「心理学的な」ところがあるのですが、本書は中でももっともその傾向が強いと、私は感じました。
「輪切り」は、一連の状況を瞬間的に切り出し、その状況が意味するところをほぼ読み取ってしまうという、人間の驚くべき認知的判断力を指した言葉です。
こういうことをそれまでに研究した学者がまったくいなかったわけではなく、たとえば認知心理学者ゲリー・クラインの「危機的状況での意志決定プロセス」などでは、似たような概念が説明されています。
第一印象
「瞬間的認知」についてここまで述べてきたことから、どうしても連想されるのが「第一印象」です。第一印象と瞬間的認知とは、どう違うのか?
両者には重なる部分も当然あるようです。本書を読む限り、私には両者をはっきり区分できるようには思えませんでした。
ただ、「輪切り」と「第一印象」には大きな違いもあります。そもそも「輪切り」は「認知」ですが、「第一印象」はその名の通り「印象」です。「認知」は多分に知覚的でリアルタイムの現実の断片ですが、「印象」とは「印象形成」という言葉もあるとおり、もっと全体的なイメージに近いものです。「雷」における「稲光」を「瞬間的認知」とすれば、「雷光から雷鳴まで」の全体を「雷の印象」とでも言えるでしょうか。
また、「瞬間的認知」は「記憶」であるよりも多分にその場その場の直接的な知覚ですが、「印象」は「印象が残る」という言葉からもわかるとおり、「記憶的」な要素も多々含みます。本書でグラッドウェルは「第一印象の誤り」を「瞬間的認知」が修正できる、ということを示唆しています。
情報過多
さらに「瞬間的認知」の恩恵にあずかるには、「認知力」ともいうべき能力を高める必要があります。だからこそグラッドウェルは「情報過多」の問題点を指摘するのです。
情報に頼るということは、直感力をあまり使わない、ということになるでしょう。自分の知覚力よりは、数値的なパターンなどによる再現性の方に期待する。しかし本書では、有り余るほどの情報を得ても、そのためにかえって判断できなくなることの危険が、よく説かれています。
本書は至ってわかりやすい本です。グラッドウェルだけのことはあり、エピソードも興味深く、データも魅力的です。他の本でもそうですが、心理学の用い方がじつにユニークで、見ようによってはユニークすぎるとも思えるでしょう。
しかし本書の主張はかなり一貫していて、次の引用の通りです。大事なのはこれを、「時間をかけて熟考してみても、瞬時のひらめき程度の判断力にしかならない」と、勝手に書き換えないことです。
綿密で時間のかかる理性的な分析と同じくらいに、瞬時のひらめきには大きな意味がある。
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