心理ハック
脳の効率をわざわざ落とさない
このように前頭葉において、我々が意識する以前の段階から、それを処理する活動がなされているのである。こういう事実があるからこそ、我々は意識した後に、スムーズに事を処理することができるのかもしれない。そういう意味では、脳は効率化されたシステムであるといえるだろう。ある意図を自発的にタイミングよく想起するためには、それを可能にする脳活動が事前に行われていると考えるのが妥当である。(80)
「あっ、忘れてた」はなぜ起こる―心理学と脳科学からせまる (岩波科学ライブラリー) 梅田 聡 岩波書店 2007-07-06
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これは常識的な感覚とかなり異なる。fMRIなどによる認知科学的な実験調査がなければ、このことに意識的に気づいたり予測する人は、よほど観察力の鋭い人だろう。
言っていることは近年の脳研究によってよく指摘されていることであり、心理学畑の人にはどうしてもフロイトが頭をかすめてくる事柄でもある。つまり「意識したときにはすでに大半は済んでいる」ということである。済んでいるのは処理であり、済ませているのは脳である。前世紀にはそれが無意識と呼ばれていた。
「それが何か?」と思う人もいるだろう。ライフハックとか仕事術においては大事なことなのである。Taskchuteの設計思想にもあるように、レシピやチェックリストにおいて「やる順番に並べる」ということの必要性と深い関係があるからだ。
ポストの前を通りかかったら葉書を出す。それに失敗するのを「し忘れ」という。よく失敗することで有名な展望記憶だが、失敗しない人だってたくさんいる。そういうヒトの脳をのぞいてみると、おそらく、葉書を出す前に葉書を出し終わるための処理がなされているわけである。それも意識下のレベルにおいて。
そうであればこういうことが言えるはずだ。タスクに取りかかって処理するまでをスムーズに進めるには、その前から必要な脳活動が済んでいるべきなのだ。とは言ってもこれを意識的に終わらせることはできない。その脳活動は意識されないレベルでなされるものだからである。
ただ、一瞬で終わるような事柄でない限り(葉書を出すのは一瞬で終わる)、今すぐ取りかかるべきタスクにたった今思い出したのでは、タイミングが遅すぎるということにはなる。
意識下の脳活動がその前に済んでいるはずなのであれば、タスクのことは取りかかる少し前に思い起こすべきなのだ。その次に取りかかることについて、「今のうちに」思いだしておくべきなのである。このドミノは延々続くわけだから、思い出すべき順番は、取りかかるべき順番であるべきだし、タスクに取りかかる前にはいくらかの休憩時間を空けておくべきなのである。
このように考えると、タスクリストを見てもすぐにタスクに取りかからず、SNSなどでアイドリングしてしまうのは脳活動的には合理的なのかもしれない。
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