ライフハック心理学

心理ハック

026 不安で仕事が手につきにくくなる理由

条件性情動反応【ジョウケンセイジョウドウハンノウ】
conditioned emotional response ; CER
 →#エスティスと→#スキナー(Estes, W. K. & Skinner, B. F.1941)は,オペラント反応遂行中の動物に,→#反応と無関係に音刺激(→#条件刺激 CS)と電撃(→#無条件刺激 US)の対を繰り返し与えた。CS中のオペラント反応はしだいに抑制され,これを条件性抑制(conditioned suppression)とよんだ。この遂行反応の抑制率が条件性情動反応量の指標となり,以後の情動条件づけの研究に広く用いられてきた。
[株式会社有斐閣 心理学辞典]

私がいま気をつけるようにしていることは、「条件性情動反応」を特に生活の中の報酬活動に混ぜないことです。これだけ余震が起これば「イヤでも混ざってくる」のですがなるべく整理しておこうとしています。

昨日、今日とテレビからもひんぱんに鳴り響く「緊急地震速報」ですが、もちろん完璧なものではありません。なったからといって絶対に体感できる地震が来るとは限らないものです。これは速報へのいかなる非難でもありません。

地震は常識的に「無条件の嫌悪刺激」でしょう。(そうでない人もいるかもしれませんが、ここではその点には立ち入らないことにします)。「緊急地震速報」は多くの場合直後に地震を伴うことから、条件刺激(CS)と考えられるはずです。

この「緊急地震速報」という「条件刺激」(学習された嫌悪感をもたらす信号)が仕事中、食事中、就寝中と飛び出してきます。そのうちに私達は、心理学実験中の動物のように、「CS中のオペラント反応はしだいに抑制され」ることになってもそう不思議ではありません。

レバーを倒したネズミがチーズをもらえるようにしておくと、ネズミはすばやくレバー倒しを覚えます。そのけなげなネズミにメトロノーム音を聞かせ、直後に電気ショックを与えるような真似を繰り返すと、「不吉なメトロノーム音」を聞いただけでネズミはレバーを倒さなくなります。

このメトロノームと電気ショックの組み合わせは、レバー倒しの操作とは独立させて行います。この点は非常に重要です。「不吉な音」は自分の取る行動と直接の関係がなくても行動の抑止につながるのです。

緊急地震速報と、その直後にやってくる地震は、私達が何を思い、何を食べ、何を見て、何をするかと直接関係のないことです。つまり「天罰」などではありません。でも私達は「不吉な音」のせいで自分たちの行動を取りがたくなります。これはまさに条件性情動反応なのです。

もちろんだからといって「緊急地震速報なし」にするのは難しいでしょう。余震もしばらく続きそうです。簡単なマインドハックはありませんが、いま感じている「不安」や「仕事が手につかない感覚」は「条件付けられた反応」だと知っておきましょう。これは知っておくだけで違うことです。