ライフハック心理学

心理ハック

モチベーションを記憶する

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展望的記憶、という重要な概念があります。ライフハックにとっても心理学にとっても重要な概念です。

牛乳を買ってこようと街に出かけて、コンビニにについたところで、何を買っていいのかを忘れるようでは困ります。それを覚えておけるのは展望的記憶があるからです。

しかし、この能力、人間の場合でもそれほど強くはないので、牛乳を買ってくるのを忘れないためのメモや、時に大がかりなサポートが用意されます。そんなサポートの1つがremember the milkでしょう。


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展望的記憶はすばらしいのですが、私には重大な欠陥が感じられます。その1つが、「モチベーションを記憶しておけない」こと。

・明日からダイエットしよう、と決意しました。
・明日になりました。
・展望的記憶のおかげで、「チョコクリームシュー10個のうち、少なくとも7個は自制しなければいけない」ことを思い出しました。この時点で展望記憶はちゃんと機能しています。
・でも食べちゃいました。モチベーションまでは思い出せなかったのです。

(なお、このポイントでフロイトはさらに深遠な問いを提出しています。私はフロイトの理論の大半は、どうにも納得がいきませんが、彼の「質問力」にはいつもため息が出ます)。

記憶というものは


そもそも、モチベーションなど記憶できないという人もいらっしゃるのですが、そうではないでしょう。もしそうだとすれば、話が難しくなりますが、パブロフの犬が条件付けされた刺激でよだれを流す現象を、より説明しにくくなります。

それに、ダイエットの例も、話をわかりやすくしていますが、実際のところ「モチベーションを思い出せなかった」わけでもないと思います。ただ、うまく機能していないのです。

経験的に「記憶」というのは、初めてだとインパクトの強いところが残りがちで、やがて、「日常の風景」の部分が残っていくように思えます。私は青森から出てきたばかりの「お上りさん」時代、池袋で見るものすべてが驚異的で、特にサンシャイン60などには圧倒されました。

しかし、その時期には、何でも新鮮で、印象が強かったにもかかわらず、すぐ道に迷っていました。つまり、風景のほとんどは、「目に焼き付いている」ようでいて、よく覚えていたわけではないのです。

いまでは、池袋に出かけても、衝撃的な光景はまったくありません。しかし、道は完全に覚えているので、迷いません。自分の行動に必要な情報は、記憶に入ったのです。(ただしこの記憶には、いいかげんなところもあります。たぶん昔の構造がそのまま頭に残っているので、新しく変わったお店などがちゃんと入力されていません)。

モチベーションの記憶についても、これと同じことが言えると思うのです。「決意した」時にはインパクトが強いのですが、そのインパクトの強いモチベーションの記憶は、すぐに薄まりますし、あまり役には立ちません。

しかし、何度も何度もトライしているうちに、あまり魅力的ではないが、行動するのには十分なモチベーションの記憶が定着していくように思えます。

何事も習慣化、ルーチン化したがる人は、このことを経験的によく知っているに違いないのです。初心における、魅惑的、時に幻惑的な「モチベーション」では実際に意味のある行動は起こらない一方、やる気があるのだかないのだかわからないような習慣化された行動とともにあるモチベーションこそ、身につけるに値するものだと知っているのでしょう。

この一連の成り行きを補強するためのライフハックが必要です。もっとも人気があるのが「記録をとること」ということになりますが、その記録のとり方を工夫してみたいところです。その話を明日ご紹介しましょう。