ライフハック心理学

心理ハック

想像が感情に与えるインパクトと知覚が与えるインパクト

18時を過ぎたら、時計はすべて翌朝の起床時刻を示すようにしたらいいんじゃないか、とふと思いました。

それを実現する新しい時計が、起床時刻計、略して起き時計(仮)。

自分の希望睡眠時間を6時間と設定したなら、示される時刻は現在時刻+6時間後ということになります。

18時なら24時
21時なら3時
24時なら6時
もし、朝6時に起きたいのなら24時に寝る、すなわち、起き時計が6時を指すと同時に就寝する必要があるわけです。

シゴタノ! 18時を過ぎたら翌朝の起床時刻表示に切り替わる「起き時計」

大橋さんの方法論というのは、いつだってこういうものです。全部が全部とはいいませんが、大半はこうしたものなのです。

そしてたいていは想像以上の効果を発揮します。大橋さんを知っていてこういうのが好きな人は、この種の「方法」に一定の効果を最初から認めるでしょうが、伝え聞いた人は「ふーん。面白いことを考えるもんだね」程度のものでしょう。

2つ考えさせられます。

1つは、想像力のひ弱さ。最近はさすがに過大評価を戒めるべくつとめていますが、それにしてもちょっと非力すぎないかと残念に思うことが多くあります。

もう1つは、一般に人は自分のその非力な想像力をかなり高く評価しているということ。想像力をあってはならないくらいに過大評価しているのです。

目にして得られるインパクトを想像で補うことはまず不可能


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たぶん私達は「目の前にないもののこと」をかなり即座に忘れているのです。今何時かが確かに分かっているのは時計を見ているその瞬間だけです。私はその感覚を、キッチンの、洗い物をする目の前に大きな時計をかけたとき悟りました。留学中のことです。圧倒的な安心感。時計はいつも目の前にあるべきなのです。

逆説的なようですが、そうしてみて初めて時間に追われなくなったのです。まだ洗い物に没頭していていいということを圧倒的な確信を持って知るには、目を上げた瞬間に自動的に時計が目に入ってくる仕掛けがあってこそでした。

大橋さんは「普段想像力でまかなっていること」を「知覚化する」というライフハックをふんだんに発明しています。6時間後を示す時計もそうですし、区切り線をいれるとか、タクシーに乗ったら写真を撮るなど、発想はだいたいそういうことです。目の前にないものを記憶力や想像力でイメージするということをしなくて済むようにしているのです。

これが実に強力なのです。たぶんこのような強いビジュアライズの能力は人間の脳ならではのもので、前頭葉付近を中心にたくさんのエネルギーを要するのでしょう。私達は我慢してそれに慣れるようにしているのですが、たぶん慣れない方がストレスフリーなのです。

リスだって「自分は大事なことも全部忘れる」などとは思っていない


リスは、アホです。もちろんこれは暴言ですが、人間に比べるとある種のテーマに関していえば、微笑ましい脳みその持ち主です。

ドングリを後生大事に掘って土に埋めるということを、私はアメリカに行って事実なのだと知りました。埋めて即座に忘れるということも分かりました。しかし埋めようとしている真っ最中には少なくとも「即座に忘れる」とは思っていないでしょう。

人間の脳はリスよりずっと大きいのですが「別物」ではありません。誤解を招く言い方ではありますが「別物」ではないのです。「はるかにアップデートされている」とはいえ「延長線上」にあります。

ですが人は「自分は忘れない」と思っていることを忘れますし「10時に6時間後を足したら朝の4時。それをわざわざ時計に見せてもらわなくても簡単に計算できる」と思うのです。

もちろん簡単に計算できます。でも計算する際に使っているエネルギーにけっこう苦しんでいるということはすっかり忘れてしまうのです。