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人生ゲーム入門―人間関係のテクニック Clip to Evernote

人生ゲーム入門―人間関係のテクニック (1967年) (ワールド・ブックス) 人生ゲーム入門―人間関係のテクニック (1967年) (ワールド・ブックス)
南 博

河出書房 1967
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この本は、いわゆる「ポピュラーサイエンス」の心理学編の古典です。かなり古い本であるため、翻訳本の訳もやや古く、一部読みにくいところはあります。しかし、通読すれば人間関係について、ユニークな視点を得られることは間違いありません。

本書の用語

専門系の通俗本はたいていそうですが、本書にも独特の用語があります。以下にいくつか挙げましょう。

・ゲーム
本書で「ゲーム」と言っているのは「人間関係」「社交」「交流」のことです。たとえば著者は「雑談というゲーム」という言い方をします。きわどいところで「セックスというゲーム」や「アルコール依存というゲーム」までありますが、なぜこういう言い方をするかというと、「人はみなゲームによって一定の恩恵を得ている」からなのです。

・親、成人、子供
著者によると、人間は誰もが「親」「成人(本人)」「子供」という「プレイヤー」を操って、ゲームをプレイします。これらのプレイヤーを巧みに操りつつ、それぞれの「ゲーム」の中で、利益や快感を得ていくというわけです。

たとえば、教授や作家といった人たちは、「雑談ゲーム」の中で、「自分の中の子供」に報酬を与える機会を、うかがっています。彼らは

「ほらお母さん、手を離して自転車に乗れるようになったよ!」

とみんなに自慢したいのです。

「雑談ゲーム」が巧みな人は、機会を捉えて「親」の役割を引き受け、「さあみなさん。「夫さえいなければ」のゲームは終わりにして、「ほらお母さん、手を離して自転車に乗れるようになったよ!」のゲームに移りましょう。A教授は今度、新しい本をお出しになるそうだから、きっとこのゲームをなさりたいでしょう」と場の会話を誘導することができます。

本書の背景

「交流分析」という考え方は、主に著者のエリック・バーンが編み出した方法です。「親」「成人」「子供」などという用語からもわかるとおり、「人生ゲーム」のアイディアのもとには、精神分析学があります。

ただ、「交流分析」の方はほとんど「無意識と自我」のような区別にこだわらず、また「幼児期の記憶」を掘り下げる方法論も採りません。どちらかと言えば現実的で、リアルタイムのやりとりに焦点を合わせています。それだけに「深みがない」「通俗的」といった批判は当然ありますが、かわりに一般的なうけは大変よく、『人生ゲーム入門』も大ベストセラーとなり、累計で500万部売れたといわれています。

本書の主張

エリック・バーンはあまりにもよく筆を走らせて、「ゲームの実例」を次々に投入しているので、読者によっては不快になったり、とにかくおもしろがったりするということになるでしょう。

が、本書の主張は十分強調されていませんが、「ゲームをやめる」ことにあります。少なくとも「ゲーム中毒」になってはいけないのです。あまりにも破滅的なゲームを続けることは、自ら精神病を招くようなものだと、著者は考えています。あるいは著者の考えによれば、精神病とはそもそも、あまりにも破滅的なゲームにはまり込むことなのです。

本書の限界

本書の限界はいうまでもなく、「深み」に欠けることです。ひどく難しい問題を、ことごとく「ゲーム」にしてしまい、「人間はゲームをする」というフレームワークで、分析を徹底している結果、問題解決のための相当の努力もやそれにまつわる悩みまで、「何かを悪化させる要因」におとしめられてしまいかねません。

しかし一方で、著者はきわめて鋭い批判能力を持っています。よほど気をつけていないと、難しい事態に直面すればするほど、私たちは「ゲームプレイヤー」になってしまうのです。(ここでドストエフスキーの登場人物を思い出す人も多いでしょう)。自我と自尊心の満足というものは、それほど人の心の中で、重要視されているのです。「人はみな、ストローク(愛撫)を求めている」という著者の言葉は、反省してみれば事実だと思い知ります。そのストロークの交換こそが、「トランザクション」(交流)なのです。

とはいえ、私たちの日常はその95%までが「交流」で占められているかもしれませんが、「交流」の分析だけでは終わらせられない、もっとましなものもたしかにあるように思えます。そのような「深み」を、「深層心理分析」で明らかにできるかどうかはわかりませんが、少なくとも何もかもを「交流分析(TA)」で済ませるのは、やはり「深みに欠ける」と思えるのです。


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