心理ハック
202 続・「やってもやらなくても良いこと」をまずやってしまう

通常、金曜日は「心理ハック」の日ではないのですが、昨日のエントリ内容は、いささか「問題あり」だったようで、コメントなども戴きましたから、補足を致します。(コメントをくださった方へ。ありがとうございました。このエントリをもって、解答にかえさせていただきます)。
問題なのはもちろん「やらなくてはならないこと」を初めにやってしまわないと、安心できないし、時間が足りなくなる危険性を抱える、という点です。「やらなければいけないこと」をさっさと片付けてしまえば気持ちもすっきりする、ということもあるでしょう。
小学校時代、夏休み前に配られた「心得」を思い出します。「勉強は、午前中の涼しいうちに、片付けてしまおう」。横に、ニッコリしながらレモンスカッシュを飲んでいる、女のこの絵がついていたものです。(余談ですが、こういう生真面目なことをやっている絵は、たいてい女の子です)。
「やらなければならないこと」を後に回すのは、リスキーすぎる、というのは事実なのですが、そのリスキーな状況が、「やらなければならないこと」と「やった方がいい、やりたいこと」の、両方を盛り込むための、代償だと思うのです。昨日のエントリの主題は、まとめればそういうことになるでしょう。
もともと、両方共にはできていないことを、前提として書きました。午前中に「スッキリ」やるべきことすべて終え、「やった方がいいが、緊急ではないこと」を午後に片付け、帰宅後は英会話の勉強もこなしている。そういう「スーパーマン・スーパーウーマン」のかたには、私が提案したような「ハック」はもちろん無意味です。順番を逆にするだけのことでしかありません。
私自身は、そうではないから、「緊急にして、やるべきこと」を、一日の終わりの方にもってきているわけです。そうしないと、「やった方がいい、やりたいこと」に、いつまでたっても手がつけられないからです。
この状況を説明するためには、経済神経学者ダニエル・カーネマンの「利益確定局面」と「損切りの難しさ」を持ち出すこともできるでしょう。1万円で買った株が、1万5千円になると、人はそれを現金化したくなり、逆に7000円を切ったときには、株を持ち続けて、1万円まで戻るのを待ちたい気持ちになる、という心理です。
人は利益の出る局面では、ギャンブルを避け、損を元に戻す際には、ギャンブルをしたくなるようです。
午前中に「やるべきこと」を片付け、「気持ちがスッキリ」した状態というのは、まさしく「利益確定」へと向かいたい状態です。こうなると、「スッキリ感」にいつまでも浸っていたいと思うでしょう。その後に、いくらためになるとは言え、英会話など「仕事に近いタスク」を手がけるには、心理的負荷が高すぎるように思えます。
逆に、先に「時間を使ってしまう」と、「やらなければならないこと」が残っているという、「損をした時間を元に戻したい」気持ちが強く働きます。ギャンブルでも、カーネマンによれば、「損をしていて、元に戻せそうだ」という状態の時が、もっとも情熱的に「ハマる」ようです。(一度ギャンブルに手を出して、損をすると、「破滅しやすい心理」に陥るのは、これが理由でしょう。元値を取り戻したら、「足を洗う」と思うからこそ、永遠にやり続けねばならなくなるわけです)。
ただ仕事では、なるべくギャンブル性を、なくしたいものではあります。だからこそ、「やるべきことを先に」なのです。そこでどうしても「セーフティネット」が欲しいところです。
で、私の取っている「善後策」は、「作業記録を取る」ことによってもたらされます。つまり、「必ず片付けねばならない仕事」について、一月ほど正確な「作業記録」を取っておき、その仕事には最長で、どのくらいの時間を必要とするかを、予測できるようにしておくのです。そしてその「最長記録」の10%増しの時間を、一日の終わりに確保しておき、「やりたいこと」に取りかかります。
過酷な会社勤め生活を余儀なくされている方は、もしかするとこれでは、「やらなければならないこと」の前に、15分前後しか残らない、ということも当然考えられるでしょう。その場合には、「やらなければならないこと」を減らす算段が先だというふうに、受け取れると思います。少なくともその状況で、「やりたいこと」をタスクに加えたとしても、めったに手をつけることができないと思われます。
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