ライフハック心理学

心理ハック

158 「習慣」と「マスター」の違い Clip to Evernote

・・・何らかの行動パターンを習慣として獲得することと、ある技術を習得することは、同じではないということだ。たしかにある種の技術は、ただ繰り返すうちに自然とマスターされてしまう場合もある。その場合には、習慣と仕事を覚えることとは、ほぼ同義になる。しかし、英会話のレッスンを習慣化したからといって、英会話ができるようになるとは限らないし、毎日ピアノを弾く習慣を付けることと、ピアノが弾けるようになることとは違う。

佐々木正悟『ライフハックス鮮やかな仕事術―やる気と時間を生み出すアイディア

これと同じ内容を、以前にもこのブログで述べたことがあります。上記の引用は、拙著『ライフハックス鮮やかな仕事術―やる気と時間を生み出すアイディア』からの引用ですが、第五章の終わりの方でとりあげ、詳しく書き込んでみました。それでも、もっと強調しておいてもよかったかもしれない、と思っています。

時に世のマニュアル本をめくっておりますと(私はそういうものを「読む」のが好きなものですから)、「良い習慣を身につけること」と、「必要な技術を習得すること」がごっちゃになってしまっていることがあります。かつて日本に広く行き渡っていた、「根性でもって倦まず弛まず繰り返すに優る、技術習得の道はない」との信念からか、「繰り返せばできるようになる」「回数を重ねたものが最強だ」という思考が、自然に成立してしまうのでしょう。

「読書百遍意自ずから通ず」などとも言います。

けれども、習慣をつけることと、技術を獲得することは、本来別のことです。繰り返すことで獲得できるのは、繰り返すという習慣であって、技術ではありません。習慣をつけたいのか、技術を獲得したいのかは、事前にはっきり区別しておく必要があります。

技術を獲得したいのであれば、習慣を「つける」ことは不要かもしれません。自動車の運転を「身につけて」しまった人が、「毎日三十分、自動車に乗り続けていないと、腕が鈍るから」とは考えないものです。レーサーのような人は、もちろん別でしょうが。

習慣それ自体が目的である、という場合もあります。その場合、やみくもに技術の向上を願うのも、考えものかもしれません。たとえば、私は泳ぐのがわりあい得意で、以前はスピードアップだけを目標としていたことがあります。しかし、もし健康のために水泳を続けるのであれば、毎日0.01秒でもタイムをアップしようとするのは、むしろ有害です。続かなくなりますし、怪我をすることもあるからです。

習慣、つまり毎日同じ営為を繰り返すということと、技術獲得、つまりできなかった何かができるようになることの、どちらを目標とするかによって、同じ毎日「繰り返す」のでも、繰り返し方を変えなければなりません。

前者の「習慣」の場合、問題は「やめてしまう」ことにありますから、ペースをつかむことや、時間を確保することや、サボりたいという気持ちとの戦いになります。後者の「技術」の場合には、問題はできるようになることにあるのですから、色々なやり方を試していかなければなりません。その場合戦う相手は、サボりたいという気持ちと言うより(一日や二日サボるのは、問題ではありません)うまくいかずに挫折してしまうことです。

付け加えますと、両者ともに最大の「敵」は怪我や病気でしょう。