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003 トムの壁塗り Clip to Evernote

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引用は全て、マーク・トゥエイン『トム・ソーヤの冒険』(新潮文庫)
からです。トムは、恐い叔母さんに言いつけられて、カベにペンキ塗りをしなければならない状況です。

彼はその仕事がイヤでたまらないのですが、一計を案じて、さも楽しそうなフリをしながらやっています。そこへ、友人たちが通りかかる。

「どうした、トム、仕事を、言いつけられたんだね」
トムは、くるりとふり返って、言った。
「なんだ、ベンだったのか。気がつかなかったよ」
「おれは、これから泳ぎに行くんだ。行きたくないかい?だが、もちろんきみは仕事のほうがいいんだろう?もちろんな」
トムは、ちょっとのあいだベンを見すえてから、言った。
「仕事って何のことだい?」
「おや、それは仕事じゃないのかい」
トムは、また塗りはじめながら、さりげなく言った。
「そうだな、仕事といえば仕事だが、そうでないといえば、そうでないかもしれないぜ。ただそれがトム・ソーヤーの性に合ってることだけはまちがいないだろうな」
「ごまかすな。まさかその仕事が好きだなんて言ってるんじゃないだろうな?」
刷毛は動きつづけた。
「好きだって?うん、好きじゃいけないって理由はないと思うがね。塀を塗るなんて機会が、子供に毎日めぐまれると思うかい?」
これで塀塗りという仕事が新しいスポットを浴びることになった。ベンは林檎をかじるのを中止した。

結局ベンはひっかかって、こう言うことになります。

「おい、トム、ちょっとやらしてくれないか」

それでもトムはなかなかうんと言いません。ついにベンのリンゴと引き替えに、イヤイヤ替わってやるという風にして、ペンキ塗りの仕事をまんまと押しつけてしまいます。

最後には、トムのペンキ塗りを「やらせてもらう」ために、村中の子供が列をなして、なにかしら「賄賂」をトムに送ることになるのです。

結局この世は、それほどつまらないものでもない、とトムはつぶやいた。ここでトムは、自分では意識しなかったが、人間の行為について、一大法則を発見したのだ――それは、大人でも子供でも、あるものをほしがらせようと思ったら、それを容易に手に入れにくいと思わせさえすればいい、ということだ。もしトムが、この本の作者のように賢明で偉大な哲学者であったら、仕事というものは人がやらなければならないものであり、遊びとは人がやらなくてもかまわないものだ、ということを理解しただろう。

トム・ソーヤーの冒険

トム・ソーヤーの冒険
マーク・トウェイン

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