心理ハック
なぜ年をとると時間が経つのが速くなるのか?
- 2009年04月13日 (月)
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| なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか 記憶と時間の心理学 | |
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鈴木 晶
講談社 2009-03-26 |
タイトルからしても魅力的だが、冒頭の数章を読んでも、タイトルの疑問への答えはいっこうに提供されない。にもかかわらず、そこがあっという間に読み進められてしまう。非常に面白い本。
まず、冒頭の2章では、ひたすら記憶の話が展開される。それも、幼少時の記憶の話。当然フロイトに絡んでくるのだろうと想像がつくが、案の定で、フロイトが「幼児期健忘」の事実に着目したことと、それをどう料理したかの話をちりばめながら、幼児にとって「記憶」とはどんなものであるかを、いろいろな角度から面白く説く。
読者にとって、最古の記憶とは何だろう? またそれは、何歳の頃の記憶だろうか?
この2つの問いは、いろいろな意味で面白い絡み方をする。ちなみに私にとって、一番古い記憶は妹が生まれた時の記憶。私が2歳の頃の出来事だった。もっともここにまず問題があって、私が自分が2歳で、妹が生まれたのだと、当時認識していたとはとても思えない。だから、そのことは後から聞いたという可能性が大いにある。
となると、エリザベス・ロフタスの「思い出されたウソ」の問題を思い出さずにはいられない。私の最古の記憶は、本当に私が二歳の時の、妹が生まれたときの記憶なのか? それとも、それを後から母親から聞いただけなのに、自分の最古の記憶だと思い込んでいるだけのことか?
確実な証拠は何もない。あるのは、どうも病院には父に車でつれられて病院へ行った記憶はあるような思い出。行った先は「佐々木小児科」という、私と同じ名字の病院だったような曖昧な記憶。雨が降っていて、ワイパーが動いてような印象。(当時私がワイパーが大好きだったようだ)。「妹」という認識は、もちろん全くなかった。母が「最近見あたらない」のが少し気になっていたように思う。(当時私は、母に四六時中まとわりついていたようだ)。
これだけだと、「作られた記憶」である可能性が十二分にある。ただ、本書によると私にちょっとした有利なデータもある。別に有利でも不利でも何ともないが、統計によれば、「最古の記憶の多くは、兄弟の誕生」であり、「2歳の頃が最古の記憶」という人は多い。この記述からすれば、私の最古の記憶に、それほど特異な要素はない。というよりも典型的だ。ひとまず安心だ。
しかしフロイトによると、なぜ幼児がこうも「何もかも忘れてしまう」のかと言えば、「記憶を抑圧するから」。フロイト得意の「抑圧」だ。なぜ抑圧するかと言えば、「恥ずかしいことだ」から。「思い出すのもおぞましいこと」だから。そのため、「どうってことのないことが思い出される」のである。どうってことのあることは、「思い出したくないから記憶喪失の対象」になる。だから幼児の頃の思い出と言えば、家の垣根にバケツが投げ捨てられていたというような、なぜそんなことを覚えているのかというほど、「覚えておく価値のないこと」ということになる。フロイトによれば。
精神分析の父として、最近流行の言葉で言えば、フロイトに対する「リスペクト」はおいておくとして、自分のことを振り返る限り、どうもこの「解釈」はやはり信じがたい。多くのフロイト反対派同様、私にも信じられない。「妹の誕生」は「どうってことのないこと」ではないし、幼児期に体験した「イヤなこと」や「いたいこと」や「恥ずかしいこと」もよく覚えている。一方で、もう引っ越してしまった青森県むつ市にあった家のドアの色とか、そういう「どうってことのないこと」は全然思い出せない。
つまり、自分のことを振り返る限り、記憶に関する私の頭の働き方は、至って常識的で平凡だ。怖い目にあったことを、覚えておく。なぜなら、ネガティブな体験にあわないようにするため。恥ずかしいことを体験したら、覚えておく。なぜなら、そういう未来を避けるため。生物として、そういう戦略は妥当だろう。思い出が暗くなりがちだが、それは副作用に過ぎない。私の思い出を明るくするためばかりに、脳は働いていないのだ。
というような話で、冒頭2章は費やされている。ほかに、エビングハウスやゴールトンなど「記憶研究の元祖」たちのエピソードも面白いが、「なぜ年をとると時間が経つのが速くなるのか?」という疑問は、全く明らかにされない。この先の章に期待である。
ちなみにこのテーマについては、以下のような本もある。
| 大人になると、なぜ1年が短くなるのか? | |
![]() |
一川 誠
宝島社 2006-12 おすすめ平均 |
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