ライフハック心理学

心理ハック

408 私たちは雑務好きだ

仕事上のパートナーが教えてくれた、とても面白い文章を見つけました。結城浩さんの「プログラマの心の健康」です。特に次のような一節は、プログラミングが全くできない私でも、耳が痛いです。

仕事がある程度の段階まで進むと、あちこちに歪みやアラが目立ってきて、全部「はじめからやり直したい」という気持ちが強くなってきます。これを私は「はじめからやり直したい症候群」と呼んでいます。この症候群の特徴は、以下のような言葉で表現できます。

  • あっちとこっちが統一されていない のが気になる
  • いまはAとBとCと別れているけれど実は汎用的なGで対応できるはずだ
  • XとYがごちゃごちゃしていてわかりにくいので全体的に整理したい
  • 要するに、全部捨ててゼロから作った方が絶対よいものになるのだ

でも、安易にはじめからやり直すと、たいていは失敗します。

結城浩「プログラマの心の健康」
http://www.hyuki.com/kokoro/


はじめからやり直したい症候群」は、決してSEさんだけに現れる心理ではありません。私もまた、本を脱稿する頃になって、全く同じ問題に悩みます。

プログラムほど厳密でないものの、本もまた、企画時の構成段階から、第1章、第2章と書き進めていく内に、アラが見えてきたり、事前には予想できなかった
知識不足を意識してみたり、章の前後を逆にした方が読みやすいように思えたりと、様々な「こんがらがり」でフラストレーションが溜まっていくのです。

そして、「要するに、全部捨ててゼロから作った方が絶対よいものになるのだ!」と叫んで、編集さんに電話をかけてみたりすることも、あります。編集さんは
たぶん、そういった経験をされることが多いので、たいてい気分をうまく鎮めてくれますが、一緒になって、「はじめからやり直してしまった」こともあるので
す。

この「はじめからやり直したい」という気持ちは、要するに「書いたところをどうすればより完成度が高くなるか」が見えるからです。一方で、まだ書いていないところは、それが全く見えません。

「脳」と「やる気」の関係において、「答えが見えている」ことに、「脳」は「やる気」を費やしたがります。書き進めてきたプログラムや文章は、自分が書き進めてきたので、これをどうすればより良くなるか、一目瞭然です。一目瞭然だと、「やる気」が沸くのです。

真っ白のエディタに、一文字目から入れていく作業は、多大な精神力が必要です。「脳」は、まだ海のものとも山のものともつかない、見通しの立たない仕事に
は「やる気」を回そうとしません。真っ白い(真っ黒い)画面を前にして、マンガを読んでいたりしたくなります。(ちなみに「マンガを読む」ことは「見通
し」が明らかなので「やる気」が回ってくる)。

こうした時に、私たちはつい、「やる気」が出ない理由を誤解するのです。

そうかわかった!
これまでの構造が悪いから、先へ進めないのだ!

これは100%ウソではないのですが、80%以上は、ウソです。次のように考える方が本当です。私たちは、「創造的な仕事」(は、先が読めない)よりも、「雑用」(は、やり方が明らかに見える)を好むのです。

先日アメリカに行った時に、かの一流の研究者と同じような話をしていて「どうして雑用ばかりにかまけてしまうのか?」という話題になったときのことです。私のつまらない疑問を先生は一言で喝破してのけました。

「それは雑用は答えがわかっているからです!」

夢を実現するには、「緊急ではないもの」を「緊急」にする

http://lifehacking.jp/2008/03/urgency-and-importance/

これまでやってきた仕事を捨てて、一からやり直し、「完璧を期す」というのは、一見創造的で悲壮感すら漂いますが、結局は雑用に近い仕事です。少なくとも、過去の自分自身がある程度以上「創造してくれた」からこそ、ちょっと手入れするだけで「完成品」が作り出せるのです。

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