心理ハック
149 「プラシーボ」(偽薬)を考える
佐々木正悟です。先日帰国しました。
今日から、いつも通り、週5日でエントリして参りたいと思います。
休暇中サイトに訪れていただいた皆様、どうもありがとうございます。
早速ですが、「プラシーボ」という言葉は「偽薬」と訳されますが、ギリギリまで分析していくと、何が「偽」薬で、何が「真」薬なのか、区別が非常に難しくなります。
「そんなことはない!」と言われるでしょうか? 学校の先生が「方便」でチョコレートを「酔い止め薬だよ」と言って生徒に渡すのと、医者が本当の「酔い止め薬」をくれるのとでは、効き目が違うはず、でしょうか?
そもそも「プラシーボ(偽薬)効果」とは本当に存在するのでしょうか?
結論から言うと、これは確かに存在します。というのも、私は留学時代に、「心理学実験」を実施するに当たって、プラシーボ効果を勘案に入れて、その差分を取りのぞく、という作業を現にやらされました。
意味がわかりにくいかと思いますが、要するに、たとえば私が「うつ病への特効薬」を開発したとします。(できませんけど)。言うまでもなく、「私はうつ病への特効薬を作りましたぞー!」と自分で言っても、それだけでは全然ダメです。ちゃんとそれがうつ病に効くかどうかを、実験しなければいけません。(その前に何度も、人体に害がないかどうか、動物等を使って実験しますが)。
そこで、私の「開発した特効薬」なるものが、曲がりなりにも効果があると主張するには、「飲めば効果が確かにあった」ということを、実験によって例証しなければならないのですが、しかしそれだけでは不十分なのです。
「飲めば、プラシーボよりも、確かに効果があった」と言えなければならないのです。ということはつまり、「空っぽのカプセル」を飲んだ「うつ病の被験者」は、実際にある程度まで、「うつ病」が改善されてしまうので、私の「開発した特効薬」はそれよりも、もっと症状を「改善」させられなければ、「薬」と主張できない、ということになります。
さてここで。
私の周りに、「冬の風邪には、XXX!これじゃないと、俺には効かないんだよ!」と強硬に主張されている方がいます。
「実験」してみたことはありませんが、おそらく(90%以上の確信をもって)この方に、小麦粉入りのカプセルを渡して、「XXXだ」と言ってあげた方が、市販の「●●●」(何でもお好きな薬をどうぞ)を渡すより、効果が大きいと思われます。この場合、「偽薬」は「真薬」よりも効果を発揮してしまうのです。
これは、二重に心理効果が力を発揮している事例です。この人の、「自分には、XXXでなくては効かない」というのは、
「真薬」+「偽薬」効果です。
一方で、「●●●など効かない」という信念は、
「真薬」-「偽薬」効果と考えられるでしょう。
そして、たんなる「偽薬」効果は、「真薬」-「偽薬」の効果よりも、効果が大きいと考えることもできます。そうなってくると、どこからがプラシーボで、どこからが薬の「本当の効果」であるかが、非常に見えにくくなってくるのです。
だいたい、患者さんの立場から言えば(そして私も社会のあらゆる場面で「患者」になることはあっても、「医者」になることはありません)、「偽薬であろうが真薬であろうが、治りさえすればいい」という気持ちがあるでしょう。(だからといって、小麦粉入りのカプセルを手渡され、それに二千円支払っていると知れば、おそらく納得できません。ここら辺は、非常に難しい問題が絡んできます)。「鎮痛剤」や「向精神薬」となれば、なおのこと「プラシーボ効果」は大きく働くので、なおのこと、「なんでその薬は効くのか?」への答えが、見いだしにくくなってきます。
ここで、ごく日常の世界に話を合わせますと、私たちは「気分が悪くなった」時や「どうもやる気が出ない」時や「今日は寒すぎる」場合などに、「プラシーボ効果」に頼っている可能性が非常に高く、非常に高いと言うより、ほぼ間違いなくそうしています。「コーヒー」や「よく当たる占い」には、明らかにそうした効果が入っていて、たとえ「コーヒー」に間違いなく「興奮剤(カフェイン)」が含まれていて、「よく当たる占い」にも、現によく当たったという経験が伴うにせよ、それらの「プラシーボ効果」は依然としてかなり大きいのです。
その大きな「プラシーボ」が、日常生活を順調にしたり不調にしたりと、いちいち影響を及ぼしている以上、これを有効活用することを考えることは、その「迷信性」を暴くよりも、有意義だと少なくとも私には感じられます。この話には、いろいろな意味合いを含みますから、今後よく取りあげることになると思いますが、本日はとりあえず、私たちには「プラシーボ効果」が実際にかなりの程度働いていて、それらの働きを厳密に特定するのは、非常に難しいというところまでを、確認しておきましょう。







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