ライフハック心理学

心理ハック

134 「まねる」という方法 Clip to Evernote

人間の脳には、前頭葉というというおでこの後ろのあたりに、「ミラー・ニューロン」と呼ばれる一群のニューロンがあります。このおかげで私たちは人まねをする能力に非常に長けています。赤ん坊の頃からです。

「人まね」能力おかげで、私たちはただ「見る」だけでスキーが上達したり、ブラインド・タッチが上達したりします。いささか余談ですが、人は「ただ想像するだけで」指の筋力を増強することが可能だそうです。毎日、頭の中で指を強く動かすイメージ・トレーニングをした結果、指の力が実際に強くなったという実験結果があります。これは、筋力自体が鍛えられるというよりも、指を動かすための神経が、脳の中でイメージ・トレーニングの結果、増強されるからだとされています。

ピアノやスキーやテニスなど、どちらかといえば「体で学ぶ」ものすら、「見る」ことが有効であるなら、パソコンの操作のように、特別「対術」を必要としないものは、いかにも「見て」覚えるのが有効に思えます。その意味では、私たちの時代はまだ少し不合理です。パソコンの操作を、後ろで見て学ぶという考え方は、全然浸透していません。お父さんがパソコンを使っているところを、子供が見てまねして覚える、ということも、あってもまれな例でしょう。

「ミラー・ニューロン」のすごいところは、見たものをまねしなくとも、「見た」ことを「やった」気になれるというところです。そのため、「ミラー・ニューロン」の活性化が、人間の「共感能力」を発達させているという意見もあります。異論もあるのですが。つまりたとえば、誰かが腕を伸ばして何かを取ろうとしているところを「見る」と、自分も腕を伸ばしてそれを取ろうとしている気に、なるという意味です。だからここで、自分の方が取りやすそうな位置にいると、「取ってあげようか?」という感情がわく、というわけです。これは確かに、共感性の基と言えそうです。

「まねる」というのは、注目すべきポイントです。「まねて」いる人は、まねされている人(つまりお手本)のやっていることを、理解しているとは限りません。むしろ全く理解できていないのに、「まね」ができるところが、ポイントなのです。「まね」するうちに、理解も伴ってくるのは、反復練習における基本です。そういった人間の「伝承の文化」を強調したのが、イタリア出身の社会心理学者、ミハイ・チクセントミハイでした。

「ミラー・ニューロン」の存在は、共感性という意味からも、技術の伝承という意味からも、紛れもなく人間を社会的動物にする重要な要因となっているでしょう。コンピュータの操作もライフハックスも、誰かが方法や操作性を考え出し、また誰かがそのツールを提供しているという意味で、文化的なものだし、社会的なものです。その活用をスピーディに達成するには、「まねする」という視点を重視すると、効率的だと思われます。