心理ハック
109 デイル・ドーテン『仕事は楽しいかね?』

少し悩んだのですが、昨日まで心理学の中でもフロイトやユングといった、かなりクラシカルなところを選んで参りましたから、今回は思い切って現代的な方へいってみます。
デイル・ドーテンの『仕事は楽しいかね?』は薄い本ですし、一時相当話題にもなりましたから、すでにお読みの方も多くいらっしゃるでしょう。その意味からも、わざわざメルマガやブログで取り上げる利点があるかどうか、悩んだわけです。
ただ、この本は名著だと思います。なぜかと言うと、私達のほとんどが、おそらく間違いなく足を取られている、陳腐で苛立たしい問題に、まっすぐ切り込んでいるからです。
陳腐で苛立たしい問題、とはいったい何でしょう?それは個々人にとって、いつもあらゆる形で目の前に現れる、小さな小さな問題です。しかし私はしょっちゅう思うのですが、そういう小さな小さな問題こそが、私達にとって本当の問題なのです。
例を挙げるなら、鼻がかゆいとか、夜眠れないとか、太り気味なのに夜食を抑えられない、とかそういったことです。もうちょっと深刻になっても、試験直前までなにもしなかったとか、彼女が出来ないといったことです。
『仕事は楽しいかね?』は、これらもっとも身近な問題に、かなりの程度、照準を絞り切れています。そういった問題を、問題として扱っているだけでも、得点は高いのです。
この本、形式はちょっと凝っています。おそらくは作り話なのでしょうが、ややもすると実際にあったかのごとく、シカゴ空港でとあるビジネスマンが、田舎くさい不思議な老人、マックス・エルモアの「知恵」を吸収していく、といった筋立てになっています。
全体で二百頁もない本です。前置きも非常に身近く、マックス老人が次の質問をしたところから、話はすぐに佳境に入ります。
「仕事は楽しいかね?」
この質問自体は、さほど重要ではありません。大事なのは、ビジネスマンの答えの方です。そうそう赤の他人では引き出せない、「アメリカ人の本音」のようなものを、ビジネスマンは一気にぶちまけます。
「私は今三十五歳です」
「勤めだして、ほぼ十五年になります。この十五年の間に、何を誇れるようになったのか。何を達成したと言えるのか。私に言えるのはこれだけです。
『そこそこの給料をもらっている』
いったい何がいけないんだろう。私は真面目に、一生懸命働いている。仕事だって、手際よくきちんとこなしてきた。なのにいっこうに出世できない。そのことに不満を漏らしたとしても、こう言われるのが落ちです。『仕事があるだけいいじゃないか』黙って感謝しろって?それじゃまるで、生きているというのはまだ死んでいないこと、と言わんばかりじゃないですか」
「同僚はみんな、いい奴です」
「問題は人じゃない。仕事そのものでもない。私の仕事はハードじゃありません。それに仕事は仕事。割り切ってますから。私は週に五十時間働いています。来週も、その次の週も、そうやってまた一年が過ぎていく。
みんなと同じように私も、世の中がもっと悪くなるだろうとは思えても、はるかによくなっていくとは思えない。そこかしこで好景気だと騒いでいますが、この国の産業の隆盛期が過ぎたことはだれもが知っています。あっちでもこっちでも、気の滅入るようなリストラのニュースばかり。何ヶ月も、ときには何年も仕事のない友達が、だれでも一人や二人はいるでしょう。にもかかわらず、空前の好景気だなんて!じゃあ、いわゆる不景気の時には、いったいどうなるんですか。」
つい長く引用し、しかも全てビジネスマンのセリフですが、私は「そう、これこそが現代の「大人の」問題だ」と感じたことを思い出します。
マックス老人は、「この」問いに答えていきます。私は正直言って、そこまでは期待していませんでした。おそらくは、問題提起だけは鋭いが、答えの方は大したことのない本だろう。薄いし、それでもよしとしよう、というスタンスで本を読んでいました。
ここから先は、来週以後に送りますが、マックス老人の「答え」のヒントは、彼の喋るようなアイディアは、過激に聞こえずとも、私達の社会に対してかなり破壊的だというところです。破壊的な考えというものは、特にラディカルに主張されていないと、実に退屈に感じられるものですが、本を読んでそういう気持ちになった人も、おそらくはいらっしゃるでしょう。
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http://www.month-psy.com/blog/2006/08/2.0060731200608e+15.html ??????????????????????????????








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