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心理ハック

107 最上位「ロボット」の人生

私は今、千葉県のあるホテルでこの文書を書いています。そこで、少し以前にお話ししたことを、思い出しました。「予測」に関する話です。

私の論において、「予測」は最上位「ロボット」のなす行為です。ところで、私達はごく短い期間をのぞくと、「最上位「ロボット」」として、生活を送ってしまっています。私の考えの中では、最上位「ロボット」よりも「偉い」のが「私」なのですが、その「私」が覚醒する時間というのは、人生においてそんなにはないようなのです。

「私」でなければ出来ない事=最上位「ロボット」ではできないことというのは、私の考えでは、現実世界をきわめて深く疑うことです。この「私」が心の底から疑うとき、もし夢を見ていれば、夢の世界は崩壊し、目が覚めてしまいます。

なぜなら、夢の世界というものは、「ロボット」によるシステムの結果だからです。そこにあるのは、「ロボット」の活動だけです。現実世界による関与は、夢の中にはありません。夢の中で飛行機に乗っていても、実際には、飛行機に乗ってはいないのです。しかし、夢の中で飛行機に乗っていて、それが事故を起こしたら、心底恐怖を感じます。

このからくりにおいて、「私」はいかなる特別な猜疑心も発揮できていません。ただ、「ロボット」が飛行機に乗っているという現実感覚を作り出し、それに対して「最上位「ロボット」」である自分自身が、当然の結果として恐怖におののいているだけです。最上位「ロボット」はまた、家族に遺書を書いたり、隣の乗客を励ましているかもしれません。次に起こることを予測して、覚悟を決めているかもしれません。

最上位「ロボット」は、予測を行い、他人に共感し、愛情を示し、適切な言葉を話し、時には憤激し、恐怖におののき、喜び笑います。すなわち、私達がやることの大半をやります。基本的には、自動反応的に、きわめて適切に行うのです。ただ、いくつか「私」でなければできないことがあります。それは、「最上位「ロボット」」と「環境」という図式を、メタ認知的にイメージすること。これが「私」にしかできないことです。

「私」によるメタ認知が、「世界」に対する優れた「ロボット」システム=自分、という図式を念頭に置くことで、そこに「世界」はないかもしれない、という穏やかではない可能性を初めて意識します。結果、本当にそこに世界がなければ、それは夢ということになります。

以上の展開を、私が千葉県のこのホテルで思い出したのは、根本的に最上位「ロボット」というものは、優れているし優れすぎているものだから、なかなか「私」が出てくる気にならないのだ、という点に、ここで突然気がついたからです。

自分の家に入る前、その様子を詳細に予測しているからこそ、そこに見知らぬ人がいきなり立っていたら驚く、というのが、「なじみ深くて珍しいもの」を欲するという、「ロボット」論の核のひとつでした。このホテルは私にとって初めての場所ですから、当然自宅の様子ほどには、詳細な予測などできません。しかし、相当程度はこうした空間さえ、予想通りに展開するものなのです。

今目の前を、子供が勢いよく駆けていきました。驚くべきことでしょうか?まったくそうではありません。こういうホテルに、今頃子供がいるのは良くある光景です。それに、子供は騒がしく駆け回るものです。最上位「ロボット」はちゃんとそうしたことを知っています。今座っている「イス」も、一度も見たことのない変わったデザインをしてはいますが、やはりイスであることに違いはありません。

それにこれがイスであることは、このイスを見るのが初めてでも、すぐに解るのです。そしてまた、ここにイスが置いてあることも、全然不思議なことではありません。もちろん、ここにはイスではなくて、花瓶が置いてあってもいいのですが、そうであっても驚かないでしょう。

最上位「ロボット」がさらに上位たる「私」に、伺いを立てるのは、いったいどんな場合でしょう?たとえば、座ったイスがいきなり消えてしまって、私が尻餅ついた場合。あるいは、先ほど駆けていた子供が、目の前で大人になってしまった場合。これらの場合には、大いに驚き、最上位「ロボット」といえども予想が外れ、「世界」の在り方に疑念を抱きます。こうして「私」が世界と「ロボット」の関係を、改めて考え出すのです。

ところで、こうしたことが起きれば、夢の中でも少し「変だな」とは思います。しかし、夢の中では「私」が眠りについているため、最上位「ロボット」はお伺いを立てても、すぐにあきらめてしまいます。そして一切を「受け入れて」しまうのです。おそらくそういうプロセスによって、少し変だなと夢で気がついても、すぐに「いや!これでいいのだ」と思い直してしまう、あの夢特有の心理の動きを体験するのでしょう。

現実世界で起こりそうな事柄の可能性について、最上位「ロボット」はまず間違いなく、その法則をよく知っています。そして、私達は生活の大半、場合によっては100%を、最上位「ロボット」に任せきっています。「ヒヤリハット」や「変なこと」に見舞われないと、なかなか「私」の必要性を認識できません。

しかし、私達は、「私」=最上位「ロボット」、であってはならないと、いつも心のどこかでは思っています。あるいは、思い知らされる瞬間があるのです。その理由について、今後改めて考えていくとともに、「ロボット」心理学2のもう一つの目玉として、「ロボット」の究極の成長という点について、新しい考察を加えていきたいと思います。

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